日産ノートRider(X DIG-S)1yearインプレッション

さて、実際に愛車となったノートRiderに乗って1年が経ちました。
この12ヶ月の走行距離は12,800km。期待と現実、予想通りだったのか期待外れだったのか。
ノートRiderと1年を共にしたインプレッション編です。


納車時から3月初めまでは降雪も考慮して185/70R14インチのスタッドレスタイヤミシュランのX-ICE、XI2を装着。
しかし降雪らしい降雪が殆どなかった為、事実上ドライ路面走行しかしてなかったり。
XI2はマッド&スノーだけあってドライ路面でも一般的なタイヤに近い感覚で走れるのはたいしたもの。
以前12SRに履いていたTOYOのガリットは割と柔軟性のあるタイヤだったけど、そこまで柔くないかな。
冬場という事もありエアコン常用で燃費はリッター11〜12km。慣らしが終わっていないとは言え、こんなもの?と疑問も。
3月ともなると暖かくなり、もう降雪の心配もないという事で純正装着タイヤ・ホイールに戻した。
サイズは185/65R15で銘柄はブリヂストンのB250。純正装着ではこの銘柄をよく見かけるので悪くはないのであろう。



ノートRider本来の姿に初対面。やはりRiderには光輝ホイールがよく似合う。ちなみにこの光輝ホイールはあのENKEI製なのです。
タイヤを履き替えてから、燃費がだんだん良好な数値に。概ねリッター13〜16kmで推移。
やはりスタッドレスタイヤより転がり抵抗が小さくなったからか、巡航時のフリクションを感じなくなった。


ハンドリングについては前車がマーチ12SRだった訳だが、そこまで求めるのは酷というもの。
あくまで実用車のハンドリングとしてジャッジすると、スタビリティ重視ではあるが若干スポーティ寄り。
ふにゃふにゃのだらしない脚ではなく、加減速時のノーズダイブやスクォートも穏やかな比較的締まった脚。
固いと評する向きもあるかもだけど、自分的にはいい落とし処を押さえていると感じる。
攻めていくとアンダーが出る実用FF車らしい特性だが、そのフロントの滑り出しは穏やか。
アクセルを踏みながらスーパーチャージャーで加給しつつ、左足ブレーキで姿勢を作ると意外と綺麗に曲がってくれる。
ただし、攻め過ぎは禁物。スポーツモデルではないのだから。
コンパクトカーとしては長めの2,600mmというホイールベースは一長一短。
Riderやメダリストなどの15インチ仕様だと最小回転半径が5.2m*1なので、
地味に駐車場や狭い道で切り返しが必要になってしまうし、タイトコーナーは苦手気味。
でも、落ち着きのあるハンドリングはこの長いホイールベースも影響しているだろう。また、後席足元の広さは特筆もの。


走りについてはスーパーチャージャーを装着したHR12DDRエンジンが一番の興味の対象だった。
スーパーチャージャーを積極的に作動させるか、大人しくECOモードで巡航するかで燃費が変わるのは想定していた通り。
"エコ・スーパーチャージャー"とは謳っているものの、HR12DDRはエコと走りの両立ではなく、軸足をどちらにも置く事ができる、と考えるべき。
スーパーチャージャーを作動させるべくECOモードをOFFにし、スロットルを大きめに開けると4,000rpmを維持したまま速度をどんどん乗せていく。
更にシフトノブにあるSPORTモードスイッチをONにすると高回転を積極的に使用するモードとなり、中間加速はなかなか気持ちのいい加速をする。
また、SPORTモードは下り坂などでエンジンブレーキが必要な際にも利用できる。
SPORTモードONでフルスロットル状態ではトルクピークとパワーピークの中間の5,000rpm近辺を維持しながら加速を続ける。
MTやステップATの様に加速に段つきがないので加給が抜ける事もなく車速を伸ばしていく状態は慣れると楽しい。
この状態を実際にどれだけ長い時間使うかというと疑問ではあるが、覚えておけば緊急時には役に立つであろう。


では、ミラーサイクルのNA状態であるECOモードは加給時に比べると物足りないのかと思うがそんな事はなく、違う性格を持ったエンジンとなる。
スーパーチャージャーによるトルク感こそ得られないものの、フリクションが低減されたエンジンはスムーズに動く上、
エクストロニックCVTが賢く、街乗りでは回さなくとも2,500rpm程度で交通の流れをリードするには充分な加速が得られる。
ただ、このモードは当然ながら"エコ"がメインであり、燃費を良くしようと思うとスポーツ走行同様に頭を使った運転が必要である。
エコ運転の基本通りではあるが、加速を緩やかに、且つスピーディーに。巡航速度に達する前にスロットルを緩め、
CVTによるエンジン回転を1,000rpmに落としつつ、スロットルは全閉にせずエコメーターの上側2〜3目盛りが消えている状態を維持。
この状態で瞬間燃費計は28.0〜30.0km/lを表示しているが、できるだけ巡航状態を保つ様に運転する事で良い燃費とする事ができる。
毎日の通勤が市街地⇔郊外の往復38km、時々高速巡航での遠出、近隣への買い物用途がメインで年間通しての平均燃費は14.15km/l。

カタログ値の24.0km/lには遠く及ばないもののJC08モードでも実情に即してない参考値でしかないし、
エコ主体ではなくスーパーチャージャーONでの加速を結構楽しんでいるのでまぁ納得の範囲かな、と。
走る状況や気分に応じて燃費優先/動力性能優先と使い分けられるHR12DDRには充分満足。


エコに一役買っているアイドリングストップは良し悪し。100%手放しには褒められない。
アイドリングストップが作動するとエアコンが冷暖房から送風状態になってしまう。これが一番の欠点。
これによって多人数乗車時、湿度の高い時期はガラスが曇ってしまうのだ。せめて停車時のエアコン動作用電源を別に用意できなかったのかと思う。
スズキのエコクールであったりマツダがeキャパシタなどを採用しているのだから日産にもできなくはないと思うのだが。
また、寒冷時はアイドリングストップが作動できる状況になるまでに15分ほどの運転が必要であること。
寒冷時の再始動が厳しいのは判らなくもないけどもう少し何とかならないのだろうか。
ただ逆に夏場は側道から出て1つ目の信号ですぐに動作するのだからたいしたものである。
次に、車両が完全停止の1秒後にエンジンが止まるのだが、これはCVTの拘束で車両を停止させているとの事。
しかし完全に停止しきる前に再発進というシチュエーションではこの拘束⇔解除が俗に言うカックンブレーキの様にギクシャクしてしまうのが残念。
また、エンジン停止の際の振動も気になる人は居るかも。マツダi-stopが停止時の振動をほとんど感じさせないほど優秀なだけにこれも残念。
でも再始動のロジックに関してはなかなか優秀。ブレーキを緩める(もしくはハンドルを動かそうとする)と0.4秒後にエンジンが再始動。
ブレーキからアクセルに足を乗せかえる前に始動しているので発進が遅れてしまう事もない。
また、坂道発進ではヒルスタートアシストも働くので後方に下がってしまう心配もない。
バッテリーはアイドリングストップ対応の物が装着されているが、現時点ではまだ割高なのは否めない。
いざ交換となった時に通常バッテリーよりも多額の出費を強いられるのでは財布に優しくないのだ。
ではアイドリングストップしなければいいのかと思うが、意外にもガソリン消費低減には街乗り主体だとじわりと効いている。
アイドリング状態で平均燃費計の数値がじわじわと落ちていくのは精神衛生上よろしくない(笑)
また、とにかく停車時が静かである。クルマ好きには気になる3気筒エンジンの音も振動も止まってしまえばなんてことはない。
積極的にOFFにするほどでもないけど、メリットとデメリット、どちらが大きいのかは今後も乗ってみないとなんとも言い難いかも。


ユーティリティに関してはたまにしか使わないシートアレンジこそ無いけれど、実用での不満はほとんど無い。
広い後席、大きく開くリアドアは同乗者に好評だし、オプションだけど荷室の有効活用ができるマルチラゲッジボードはありがたい。
ただ、あまりに暗いルームランプは大きな不満。豆電球1個では暗すぎて、点けた事すら忘れて消し忘れた事も何度かあった。
これは社外品のLEDルームランプに入れ替える事で解決。今度は明るすぎるくらいである(笑)

(写真に撮るには明るすぎたので-1.3の露出補正をしています)


電装品の利用は12V電源がセンターコンソール後方にある為、四連ソケットをセンターコンソール後方に装着。
そこから取り出した配線はコルゲートチューブで包みコンソール助手席側を這わせて、

ダッシュボード中央にレーダーとポータブルナビを設置。


運転席真正面に鎮座するメーターは見栄えがいい。視認性もよく、ECOメーターを意識する事で無駄も減らせる。

シートについては「どうせダメだったらレカロに替えてしまおう」と思っていたものの、予想外に優秀。
毎日の通勤はもちろん、長距離運転でも腰が痛くなったりしないのでそのままで乗っている。乗降性も不満なし。
エアコンについてはメーカーオプションのオートエアコンにしたけれど、ブラインドタッチできる様になるには少々慣れが必要だった。
でも、オートエアコンを選択する事でピアノブラックのセンタークラスターになるので見栄えはいい。欠点はホコリが目立つくらいか。


1年通してこのクルマと付き合ってみて、初試乗の時に感じた「よくできた実用車だな」という思いは変わらず。
実用車ながらも意外とスポーティー寄りなハンドリング。装備は至れり尽くせりではないものの必要にして充分な内容。
ECOモードのON/OFFにより、走行シチュエーションに適した特性を使い分けられるHR12DDRエンジン。
カタログに自慢げに載っている燃費は少々期待値に届かなかったけど、年間通して平均14km/l強はカタログ値の6掛けなので不満ではない。
また、性能には直結しないけどRiderのスタイリッシュなエクステリアはお気に入り。

オーロラモーヴのボディカラーはRiderでは少数派なのかすれ違いどころか自分の個体以外で見た事が無いのでレアかもしれない(笑)
当初は高回転型NAのMT車から加給CVT車へという性格の異なるクルマへの乗り換えで満足できるのかという懸念はあったものの、
思っていた以上に運転する事を楽しめるクルマでした。スポーツチューンドの車を自在に操るドライビングが楽しいのとは違うベクトルだけど、
街中での流れを乱さずにクルマの出力を必要なだけ取り出して無駄なく走らせる、というドライビングもまた楽しいのです。

*1:14インチ仕様は4.7m